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相続

相続した不動産の売却手続を司法書士に依頼?~遺産承継(遺産整理)業務~


いつもお読みいただきありがとうございます。


さて、今回は相続した不動産の売却手続のお話しを中心にお送りします。
相続の手続自体もそうですが、不動産の売却手続も多分に漏れず面倒なものです。

自身の所有不動産ならまだしも、他に相続人がいることも多いでしょうし、そもそも対象不動産が遠方にある方が多いのでは?
相続手続のため司法書士を探し(場合によっては税理士も探し)、不動産業者を探し、売却手続を進めていく・・・


結構な労力と時間を要するであろうことは容易に想像できるでしょうー
結果、面倒になってしまって放置しているような相続物件も多いのではないでしょうか?


気持ちは分かります。
ただし、今後の不動産管理や固定資産税負担の問題もありますし、それに加えて、相続登記の義務化の話しも着実に進んでいます(とうとう2年後にやって来ますよ。)。
ようするに、ずっと放置し続けるのは色々と問題が生じかねないわけです。


ほんと、面倒ですし、大変ですよね・・・


例えば、それら面倒な一連の手続きをすべて司法書士に依頼できるとすれば?
今回はそういう感じのお話しになります。


<目 次>



1.前提として確認いただきたい点

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まず、本題に入る前に確認しておいていただきたい点が一つ。


詳しくは後述しますが、当ブログは、遺産承継(遺産整理)業務の一環として司法書士が行う相続不動産の売却手続のご案内です。
ただし、あくまで当該業務は一部の限られた方に有用な手続であって、皆が皆、選択すべき手続ではありません。


当該手続ではなく、単に相続登記(不動産の名義変更)手続や預貯金等の相続手続の依頼をされるだけで目的を達成できる方が多いと言うか、むしろ、それが大半かと思われます。

仮に実際に売却したい相続不動産があったとしても、遺産承継(遺産整理)業務としてではなく、単に僕の付き合いのある不動産業者をご紹介することも可能です。
その他、必要に応じて税理士や弁護士などもご紹介致します。
※紹介料などはいただいておりませんので、ご安心ください。


自ら手続をご紹介しておいて、かつ、序盤の序盤からこんな事を言うのもあれですが、ようするに当該手続を利用せずともどうにかなるケースがほとんどなのです。


ただし、もちろん有用なケースがないわけではありません(そうでなければ、そもそもご紹介しませんし。)。
そのため、あくまで当該手続は選択肢の一つとして捉えていただき、その上で状況に応じた最適解を探していきましょう。



1-1.そもそも司法書士の業務なのか?

あるいはそう思われるかもしれません。
ですので、その辺りのご説明も少しー


司法書士の業務と言えば、相続や売買をはじめとした不動産登記、その他、会社の設立などの商業登記を思い浮かべる方が多いかと思います。
いわゆる、登記業務の専門家としての顔ですね。
また、それらは僕自身の主業務でもあります。


ただし、司法書士の業務はなにもこれらに限られるわけではないのですー


例えば、裁判所関係の業務です。
平成14年の司法書士法の改正によって、司法書士は簡裁訴訟代理等関係業務というものを行えるようになりました。
俗に言うところの、「簡裁代理権」です。
※すべての司法書士が対象ではなく、司法書士資格にあわせて別途その旨の試験に合格する必要があります。

具体的には、訴訟額140万円までは、代理人(ただし、簡易裁判所に限る。)として手続に関与できるようになり、また、地方裁判所や家庭裁判所でも、代理人にはなれないものの、裁判所書類の作成業務を行うことが可能になりました。


結果ー


司法書士は、簡易裁判所での過払い金訴訟や地方裁判所での自己破産や個人再生の申立書類作成、家庭裁判所での相続放棄の申述書の書類作成等々、活躍の場を広げることになっていったと...(なにか司法書士の歴史みたいになってきましたが、わりと大事なところなのでもう少しお付き合い下さい。)

また、当時はそこまで注視されていませんでしたが、上記の改正に加え、とある動きがありました。
それが今回の本題であり、司法書士が登記業務や、簡裁訴訟代理等関係業務の他、いわゆる「財産管理業務等」を行うことができる旨の明文化なのです。

以下、根拠となる条文です。


【司法書士法 第29条】
司法書士法人は、第3条第1項第1号から第5号までに規定する業務を行うほか、定款で定めるところにより、次に掲げる業務を行うことができる。
一 法令等に基づきすべての司法書士が行うことができるものとして法務省令で定める業務 の全部又は一部
  (二 以下 略)

【司法書士法施行規則 第31条】
法第29条第1項第1号の法務省令で定める業務は、次の各号に掲げるものとする。
一 当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱により、管財人、管理人その他これらに類する地位に就き、他人の事業の経営、他人の財産の管理若しくは処分を  行う業務又はこれらの業務を行う者を代理し、若しくは補助する業務
二 当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱により、後見人、保佐人、補助人、監督委員その他これらに類する地位に就き、他人の法律行為について、代理、同意若しくは取消しを行う業務又はこれらの業務を行う者を監督する業務
 (三、四 略)
五 法第3条第1項第1号から第1号まで及び前各号に掲げる業務に附帯し、又は密接に関連する業務

とは言え、これだとさすがに分かりにくいですよね...
往々にして条文なんてものはこんな感じなのです...


もう少し簡単に表現するならば、依頼者との委任契約による財産管理業務が、司法書士の行なえる業務内容として明記されたわけです。
結果、遺言執行者や各種財産管理人(不在者財産管理人、相続財産管理人等)などの財産管理業務はもとより、依頼者からの依頼に基づく任意の財産管理業務を行なうことができるようになったとー

具体的には、司法書士が依頼者の代理人として、従来からの登記業務に加え、預貯金・有価証券の相続手続(残高証明書などの発行請求を含む)や、ひいては換価分割等のための不動産売却手続を業務として行えるようになったというわけなのです。





2.遺産承継(遺産整理)業務とは

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さて、助走部分が思いの外、長くなってしまいましたが、ここからが遺産承継(遺産整理)業務の本題となります。
まずは以下のリンクをご確認いただければー

「遺産承継(遺産整理)業務/司法書士九九法務事務所HP」
https://99help.info/service/isann/post_54/


まあ、ようするに、遺産承継(遺産整理)業務とは、登記だとか、預金手続だとかに限らず、基本的に相続に関連する各種手続のすべてを司法書士に依頼いただくようなイメージです。
もちろん、手続後の各相続人への分配業務や、各種調査、税理士等の紹介などもすべてここに含まれています。


ご自身等で手続を行えない何らかの事情がある場合に選択すべき手続とも言えるでしょう。
そして、当該業務の一環として、相続不動産の売却業務が絡んでくるわけです。



2-1.どういったケースで検討すべき手続なのか?

この辺りが最も気になるところかと思います。
状況はそれぞれなので一概には言えませんが、基本的には以下のようなケースを想定しております。


  • 各種手続をスムーズに進めたい場合
    相続の手続は手間ばかりです。
    特にコロナ禍以降、致し方ないことなのでしょうが、法務局や金融機関の対応が少し変わってきており、独力ですべてを行うのは大変な労力を要すことに...
    それだけならまだしも、元々慣れない手続でしょうから、戸惑う点も多くあるかと思われます。
    その点、司法書士に依頼いただければ、各種手続をスムーズに進めることが可能です。
    遺産の調査や預貯金、不動産等の各種相続手続、遺産分割協議書の作成、不動産の売却、税理士への依頼等々、面倒な手続を一元化してみてはいかがでしょう?
    尚、必ずしも遺産承継(遺産整理)業務としてではなく、単に相続登記の依頼や法定相続情報一覧図取得の依頼だけでも、相続人の手間を大きく軽減することができます。
    その辺りにつきましては、面談の際に状況に適した助言を致しますのでご安心いただければ。



  • 遺産の詳細がよく分からない場合
    何も珍しい話ではありません。
    親族とは言え、他者の財産が対象となるのですから。
    また、把握している以外にも預金口座や生命保険がありそうな場合や、不動産の存在は知っていても、その詳細がよく分からない場合もあるでしょう。
    既述のとおり、遺産承継(遺産整理)業務では、遺産分割協議書を行う前提として遺産目録を作成、その際に可能な限りの財産調査を行うことになります。
    具体的には、めぼしい金融機関での「預貯金照会」や状況に応じて「生命保険契約照会制度」の利用、対象不動産の検索のため「名寄帳」の取得を行い、遺産の詳細を調査致します。
    ただし、情報が多いに越したことはありませんので、なるべく手元にある書類はご用意ください。



  • 遺産の管理が心配な場合
    遺産相続で揉める要因の一つとして、遺産管理の問題があります。
    一般的に預金等の相続手続は、相続人の中から代表相続人を定め、その者の口座に預金額を集約するケースが多いです。
    その他、不動産の売却手続についても同様のことが言えます。
    尚、もちろんながら、遺産を集約すること自体に問題があるわけではありません。
    むしろ、諸経費の精算等、手続面の便宜を優先するならば、有用な方法ですらあると言えます。

    ただしー

    だからと言って、遺産管理の問題が生じ得ないとは言い切れません。
    ケースによっては代表相続人が遺産を隠してしまったり、他の相続人が意図しない用途に消費しまったりするようなことも...
    また、そうでなくとも対象となる金額が大きければ大きいほど、管理する方も任せる方も何かと心労が大きいことでしょう。
    遺産承継(遺産整理)業務では、案件ごとに預かり金口座を作成、司法書士が責任をもってそれを管理、不測の事態に備えます。
    遺産の分配が終わるまで自身や他の相続人が遺産管理するの避けたいという方にも有用な手続なわけです。



  • 遺産が遠方にある場合
    預貯金関係についてもそうですが、特に対象となる不動産が遠方にある場合は、移動だけでも大変な手間がかかってしまうことでしょう。
    交通費だってばかりになりません。
    また、それでも一度で済めばいいでしょうが、さすがにそう簡単には行きません...
    案件にもよるでしょうが、複数回の往来は覚悟しておくべきです。
    近くに相続人がいないのであれば、それだけでも十分に検討に値する手続かと思われます。 




2-2.不向きなケースは?

これまた一概には言えません。
あえて言うならば、以下のようなケースが該当します。

  • 既に相続人間に争いがある場合
  • 遺産内容がシンプルな場合


まず、相続人間に争いがある場合は、その内容にもよりますが、原則、弁護士に手続を依頼すべきです。
なぜなら、司法書士は相続手続の代理人にはなれても、相続人そのもの代理人にはなれないからです。
単に話し合いができていないだけであれば、そのお手伝いはできます。
その際は、手続の説明や流れ、不明点の解消に努めさせていただきます。

ただし、特定の相続人の代理人となって、他の相続人と交渉等は致しかねます。
その点、ご容赦ください。

とは言え、お困りでしたら、とりあえずご相談いただく分にはかまいません。
仮に対応できない内容であれば、その旨、きちんとご説明しますし、状況に応じて弁護士等のご紹介を致しますので。


遺産内容がシンプルな場合は、遺産承継(遺産整理)業務をご依頼いただくより、個別の相続手続(相続登記のみ、預金の解凍手続のみ等々)を依頼いただく方が費用的にお安く済みます。
もちろん、それらの判断はこちらでも行いますのでご安心いただければ。



2-3.遺産承継(遺産整理)業務手続の流れ

では、具体的にどのような手続を行っていくのか?
改めてご紹介致します。
※あくまで一般的な例となります。相続内容によって異なってきます。


  1. ご面談(ご相談)

  2. 相続人の確定業務
    ※被相続人(お亡くなりになられた方)の「出生~死亡」までの戸籍謄本等をすべて収集し、相続人を確定させます。また、当該書類取得後に法務局で「法定相続情報一覧図」を取得致します。

  3. 遺産目録の作成及び各種遺産の照会手続
    ※判明している遺産だけではなく、漏れがないよう預貯金(普通預金、定期預金等)、有価証券、不動産、保険契約等の照会手続を行います。

  4. 不動産の査定依頼
    ※遺産に不動産が存在する場合で、かつ、売却を希望する場合です。
    そのようなケースでは、まずは現実的な売買代金を把握する必要があるため、司法書士の方で不動産仲介業者数社に査定依頼を行います。

  5. 遺産分割協議書の作成
    ※相続人全員で、判明した遺産を誰がどのような形で相続するのかを話し合っていただきます。
    尚、遺産総額や遺産内容によっては、この時点よりも前に税理士をご紹介致します。
    また、相続内容、遺産内容に応じ、「換価分割」や「代償分割」等の助言もさせていただきます。

  6. 各種相続手続(預金、有価証券等)
    ※相続の届出、解約手続等、必要な作業を司法書士の方で行わさせていただきます。
    尚、その際、受領する預金等につきましては、基本的に司法書士名義の預かり金口座にてしっかり管理させていただくのでご安心ください。

  7. 各種相続手続(不動産)
    ※不動産の名義変更(相続登記)を法務局で行います。

  8. 不動産の売却手続の依頼
    ※売却希望金額を調整の上、司法書士の方で不動産仲介業者に売却依頼をかけます。

  9. 不動産の売買契約、不動産の引き渡し、売買代金の受領
    ※基本的に面倒な手続きはすべて司法書士が行います。
    また、情報は常に共有させていただきます。
    尚、売却時の意思確認や本人確認等、一部についてはご協力いただく必要がございます。

  10. 遺産分割協議内容に応じた遺産の分配
    ※遺産分割協議内容に応じ、預かり金口座から各相続人に遺産の分配を行わさせていただきます。
    この際、合わせて司法書士報酬や実費の精算を行わさせていただきます。




2-4.想定される報酬は?

遺産承継(遺産整理)業務は、案件によってかかる手間も期間も大きく異なってきます。
そのため、詳細を伺ってからでないと一概にこの金額と言うのが難しいのです...
ただし、これまでの経験からすると、概ね以下の金額で料金設定しております。

  • 司法書士報酬 15万円(税込16万5,000円)


尚、相続内容の詳細を伺い次第、事前にお見積り致しますのでご安心を。
その際、不動産、預貯金、保険等、判明している情報をご提示をお願いしております。
また、既述のとおり、当該司法書士報酬は遺産の分配時に精算させていただきますので、事前のお支払いは不要です。

参考までに、個別の相続手続の依頼については、以下のとおりです。
遺産承継(遺産整理)業務を利用せず、個別の依頼をご希望の場合はこちらがその目安となります。

「相続手続の費用・報酬/司法書士九九法務事務所HP
https://99help.info/service/succession/post_11/



3.まとめ

今回は遺産承継(遺産整理)業務についてのお話しでした。
ちょっと分かりにくかったですかね?

ただ、近頃、需要があるんですよ。
確かに面倒ですものね相続手続は。

あまり把握されている方は少ないかもしれませんが、司法書士は相続登記以外にも使いようがあるんです。
例えば、相続手続全般を銀行などに頼むよりも、かなりリーズナブルな価格設定で対応が可能です。
興味のある方はまずご相談いただければ(相談料はいただいておりません。)。

案件に応じた最適解を一緒に模索しましょう。


それでは今回はこの辺で。

write by 司法書士尾形壮一