よくあるご質問
債務整理破産の手続の直前に、生命保険を解約するのは違法ですか?
解約自体が問題になることはありません
自己破産手続を行う直前に生命保険等を解約したからと言って、それだけで自己破産手続が否認されたりするわけではありません。
あくまで解約という行為自体に違法性はなく、それによって得た金銭(解約返戻金)の取扱いに注意さえすれば、手続に支障をきたすようなことはないのです。
それではここで、財産の処分行為についての破産法の条文を見てみましょう。
破産法 第161条
破産者が、その有する財産を処分する行為をした場合において、その行為の相手方から相当の対価を取得しているときは、その行為は、次に掲げる要件のいずれにも該当する場合に限り、破産手続開始後、破産財団のために否認することができる。
①当該行為が、不動産の金銭への換価その他の当該処分による財産の種類の変更により、破産者において隠匿、無償の供与その他の破産債権者を害する処分(以下この条並びに第168条第2項及び第3項において「隠匿等の処分」という。)をするおそれを現に生じさせるものであること。
② 破産者が、当該行為の当時、対価として取得した金銭その他の財産について、隠匿等の処分をする意思を有していたこと。
③ 相手方が、当該行為の当時、破産者が前号の隠匿等の処分をする意思を有していたことを知っていたこと。
これだけでは分かりにくいかと思われますので、保険契約の解約に置き換えて要約してみましょう―
条文要約後
『適正な生命保険の解約であれば、それによって得た対価(解約返戻金)を隠匿等の処分(例えば配偶者や両親の通帳に移して破産手続上の財産として計上しなかったり、旅行、ギャンブル、風俗等の遊興に支出してしまう等々)をする意思がない限り、ただ単に現金に換えたというだけでは否認の対象にはならない。』
尚、破産手続上、裁判所へは『過去2年以内の財産処分の有無』を報告することとなります。
生命保険の解約もこれに該当し、保険を解約したことによって幾ら受領し、その使途が何だったのかが重視されます。
その際、解約返戻金受領時の保険会社作成の計算書、使途を証する領収書等が疎明資料になりますので、捨てずにおいて下さい。
また、使途に優劣があるというわけではないですが、例えば滞納税金の支払いや破産手続にかかる費用(予納金、司法書士報酬等)への拠出であればまず問題になることはありません。
その他、必要な生活費等に充てることなども可能ですが、各々の受領金額や生活状況にもよりますので、詳細は依頼する専門家へお問い合わせいただくのがよろしいかと思われます。
保険の名義書き換えにもご注意ください
保険契約は、基本的に保険契約者が希望すれば、その名義を変更することができます。
例えば、自己破産直前に夫名義の保険を正当な理由なく妻名義に変更したとします―
これ、よくない行為です。
と、言うよりかは、理由いかんによってはかなりまずい行為です。
このような行為を『財産の隠匿』と呼びます。
立派な詐害行為となります。
破産に備え財産を隠したと判断されるわけです。
「裁判所への申立時には、自己破産を行う夫名義ではないと判断されるだろうから、これで安心だ!」
とは決していきませんよ。
なぜなら、保険の名義変更は解約同様、財産の処分行為にあたるからです。
解約の場合は解約返戻金という形で対価を得ますが、名義変更は第三者への無償の譲渡でしかありません。
そのため、保険の名義書き換えに悪意性があれば典型的な詐害行為(財産の隠匿)となり、最悪、破産手続自体が頓挫しかねとういわけです。
「ばれわけないだろう??」
そう思われる方がいるかもしれませんが―
まずばれます。
そうそうとして、裁判所や手続を行う我々専門家を欺けるものではありません。
また、その悪だくみがうまくいかなかった場合のリスクは甚大です。
で、あれば他の解決策を探しましょう。
破産するからと言って、必ずしも保険が解約されるわけではありません。
まずは我々専門家に相談するようにしてください。
保険以外の他の財産にも同じようなことが言えます
保険以外の他の財産、例えば車や不動産などにも同様のことが言えます。
それらを売買すること自体は何ら問題ありません。
注意すべきは売買代金とその使途です。
尚、使途の注意点は保険の場合と同様です。
適宜、専門家にご相談ください。
続いて売買代金についてですが―
あくまで適正価格である必要があります。
よくあるのが親族や友人への売買です。
おそらくは安価に売買しておいて、後で買い戻す趣旨なのでしょう―
もちろん、これ、よくない行為です。
金額等、状況によっては売買行為が否認されてしまいます。
破産管財人に売買自体を取り消されてしまうわけです。
尚、悪意性があれば、その上で破産手続が頓挫しかねません―
財産の処分は違法ではありません。
違法ではありませんが、よくご注意ください。