平日9:00〜20:00(土日は要予約)

よくあるご質問

会社・法人登記

監査役設置会社の定めの廃止を検討しています。登記手続上での注意事項はありますか?

注意事項は幾つかございます。

まず、平成18年5月の新会社法の施行に伴い、株式会社における監査役の設置は任意となりました。
ただし、それはすべての株式会社に当てはまるものではありません。

監査役設置会社の定めを廃止することができない、監査役を置いておかなければならないケースもあるのです―


また、諸々の要件をクリアーし、実際に監査役設置会社の定めの廃止手続を行う段階でも注意事項がないわけではありません。

例えば会計限定監査役の定めの登記がなされている場合などです。

それぞれ順にご説明させていただきます―

c2b377694eb508a889c701b2856cd7ea_l.jpg

監査役を置かなくてもよい会社

当然と言えば当然でしょうが、監査役設置会社の定めの廃止ができるということは、監査役を置かなくてもよい条件が揃った会社ということになります。

以下、その条件です。

  • 株式の譲渡制限があること
    株式の譲渡制限とは、株式を第三者に譲渡する際に会社や代表者の承認が必要である旨を言います。

    現存する会社の多くは、この株式の譲渡制限が設けられています。
    おそらくあなたの会社にも―

    尚、株式の譲渡制限の無い会社を「公開会社」と言い、俗に言うところの「上場会社」はすべてこの「公開会社」です。

    また、委員会設置会社を除くすべての公開会社(株式譲渡制限をしていない会社)には、法律で監査役の設置が義務付けれています。

    そのため、監査役を置かないことにするのであれば、その前提として株式の譲渡制限の規定を設ける必要があるわけです。


  • 取締役会を設置していないこと
    取締役会を設置している会社(取締役会設置会社)には、基本的に監査役の設置が必要となります。

    ただし、取締役会を設置していたとしても、会計参与がいる場合には、一部の例外(資本金5億円以上または負債総額200億円以上の会社)を除き監査役を置かなくても大丈夫です。

    ちなみに会計参与とは、会社法になって新たに作られた機関であり、税理士や公認会計士などがその任にあたります―


    ですので、取締役会設置会社が監査役を置かないとするのであれば、その前提として取締役会自体も併せて廃止するか、代わりに会計参与を置く必要があるというわけです。

    尚、取締役会を設置しなくても監査役を置くこと自体は可能です。
    (取締役1名、監査役1名等々―)

    ついでに言うと、監査役を置きつつ会計参与を加えることも可能です。


  • 大会社(資本金5億円以上または負債総額200億円以上)でないこと
    この要件に当てはまる場合は、有無を言わずに監査役を設置しなければなりません。
    さすがにその規模の会社だと当然そうでしょう―


  • 会計監査人を置いていないこと
    会計監査人を設置している会社に監査役は必須となります。
    取締役の職務執行の監査等、ある程度なんでもできる上司(監査役)と会計のスペシャリストである部下(会計監査人)のような関係だからです。

    ただし、会計監査人を置いている会社は実際にはそう多くはないので、知識として持っていれば十分かと―


まとめると―

上記に当てはまるのであれば、監査役設置会社の定めの廃止は可能です。
仮に当てはまらないのであれば、それを是正する他の登記が必要となるわけです。

とは言え、一般的な案件では監査役設置会社の定めの廃止と併せて取締役会を廃止することぐらいでしょう―


会計限定監査役の定めがある場合の注意点

これは上記とは異なり、「できる」、「できない」という部分の注意点ではありません。

まず会計限定監査役についてはこちらを参照ください。

「会計限定監査役の趣旨と登記手続について/司法書士九九法務事務所HP」
https://99help.info/blog/_5_hphttps99helpinfoservicecompany-registerpost_44/


注意点は実に簡単です。

なぜか、監査役設置会社の定めの廃止登記を行っても、会計限定監査役の定めは残ってしまうのです―

連動して消える(登記官が消してくれる)ようなイメージがありますが、そうはなりません。
あくまで監査役設置会社の定めの廃止登記と併せて会計限定の登記の抹消登記が必要となります。


ちなみに、調べてみると、後からでも会計限定の登記の抹消登記のみを申請できるようですが、別に実費(登録免許税)がかかってしまうようです。

忘れないようにしたいですね―
今後はそうした事例も増えてくることでしょうから、私的にも注意したい点です。

その他

突き詰めていくと、上記の他に役員の責任免除規定や責任限定規定がある会社や、役員選任権付の種類株式を発行している会社なども、監査役設置会社の定めの廃止時に支障が出でしまいそうです。


ただし、それをここでご説明させていただくとなると、あまりにも内容が複雑になり過ぎるかなと―

それらについては、とりあえず個別具体的に対応させていただくとして、機会があれば別の形で記事にさせていただこうと思っています。